1-2.ゼネテスの武器に関する突っ込み疑問(後編)
今回は、彼の左腰の短剣について考えてみました。
末弥先生の絵を始め、彼のイラストのトレードマークであるにも関わらず。
ゲーム中では一っ度も活躍しないあの短剣。
果たしてあれの用途は何か?
真っ先に思い付くのは、接近戦用だと思います。
確かに、混戦時などで大量の敵に囲まれた場合。
七竜剣だと大き過ぎて、振り回しにくいですよね。
…ただ、これもすぐ思い起こされると思いますが、彼の場合、
素手で殴り倒した方が早いんです。
相手が一人二人の時に限りませんよ
飢えた者の迷宮イベントでも、金属音に混じって何気に殴る音が聞こえます
実際、護身を心得てらっしゃる方からも
「剣を抜くより拳を固める方が早いから」という
あまり実生活で必要としたくない(笑)ご意見を頂いてます。
…鎧装備の相手にゃ、拳も効かないだろうって?
でも鎧騎士を前に、剣も抜けない程間合いを詰められる様なら、
この人とっくに死んでるでしょう。
体格を生かした闘い方を心得ているからこそ、「凄腕」との評判なんですし。
他に考えられるのは、王宮の短剣という可能性。
旅先発でフリントが主人公に託す、エリス王妃の密偵という証、あれです。
…しかしこれも、胸を肌蹴て髭も剃らない彼の性格及び嗜好から推測するに、
実用性の無い装飾品を携えるとは思えません。
それが、彼の飛び出した貴族世界の物なら尚更でしょう。
まあ叔母様から直々に頂いた物なら肌身離さず持ってるかもしれませんが(笑)
仮にそうとしても、ロストール王家の紋章が見当たりませんし。
あれば旅先主人公がすぐ気付くでしょうから、これも却下。
じゃあ一体何の用途か。
実は、先程敢えて避けた問題があります。
「鎧に拳が効かないなら、じゃあ剣は効くのか?」
…無理でしょう(笑)
相手は金属ですよ? 斬れませんて絶対。
ゲームのグラフィックはともかく、現実的には不可能です。
両手剣本来の使い道である“重みを利用して相手を叩き潰す”にしても、
分厚い甲冑相手じゃ、せいぜい打ち身させるのが限度です、
余談ですが、主人公の剣遣いが振り下ろすばかりなのは
「竜破」で殴り倒す様に見せたい開発者様の意図ではないかと思ったり
前編で挙げたエストックや、他にもレイピア等、細身の剣の登場は、
この甲冑に起因します。
鎧の隙間から肉体を“刺す”為に、細長く軽く発達したんですね。
しかしゼネテスの「七竜剣」は、「竜破」よりは細くとも、階級4と重量級。
“刺し貫く”行為には不向きです。
(一般に、両手持ちの剣は重さ2kg〜6kg、現在の販売品でも2kg以上します。
試しに皆様、2kgのダンベルか米袋でも持って、動かしてみて下さい。
前に出す作業は意外としんどい事、お判り頂けると思います)
実際の刃の厚みや幅を想定しても、鎧の狭い隙間は狙い難い筈。
そこで短剣が活躍する訳です。
防御力に優れた甲冑の欠点は、ご存知、重量です。
特に全身フル鎧だと40kgは確実にあるそうで。 女の子背負って闘うようなもんか
倒れたり、馬から落ちれば、骨折も伴って立ち上がれない事は明白です。
そんな相手にトスッと止めを刺し、苦しみから解放するのが「慈悲」でした。
ルネッサンス期の対・甲冑用短剣は「ミゼリコールディア」と呼ばれたそうです。
直訳すると「慈悲の短剣」。 英語だとミゼリコードです。けどそんな慈悲いらない;
勿論、立ってる相手の懐に飛び込んで刺すのも有りです。
さて皆様、アンギルダンとゼネテスの一騎打ちシーンを思い起こしてみましょう。
ラストでとっつぁんが倒れる時、
ゼネテスの手に握られているのは七竜剣ですか?
…微妙に卑怯な気がするのは私だけですかね; まあとっつぁんの手にも斧ありませんけど
但し、ミゼリコールディアは一般に、柄頭(握りの一番後ろ)が円盤状です。
“突き刺す”行為にはこれまた力が要るので、
(試しに皆様、ブロック肉に包丁を…え?しつこい?)
片手を添え体重を掛けてグッと押し込む時、痛くない様な工夫が施されたのです。
…件の短剣の形状は、そう考えるとちょっと不便ですね。
じゃあ深く刺さなくても相手を殺せる様な細工がある筈。
それは何か?
そう、毒です。
歴史上でも、騎士の装備として実在します。
刀身の溝に毒を仕込み、面にも塗りつけた毒短剣。
ええもちろんシロウラギリで(笑)。
待て、今なぜ一発変換で出たんだ;
この毒やっぱり実在しませんかね? 結構文献調べたんですけど
由来が気になるなー、せめて「白」か「城」かを知りたいです
そしたら植物系か否か位判断…ってそういう余計な知識を求めるな私;;
おお、これで鎧騎士は勿論、叔母様の邪魔者も一撃必殺♪
…何か、ゼネさんのイメージが、一気に暗殺者に傾いた気が…(汗)。
(ぼそっ)ルナシャドウ持ってるし
嫌だあぁぁ(泣)
という訳で結論:It's 甲冑騎士に止めを刺す為の毒塗り短剣。
…最近「騎士道」に疑念を深めつつある管理人でした。
お侍さんの立ち居振舞いが、遥かに潔いと思うんだが…。
(後日加筆)
蛇足ついでに、短剣の用途を大まかにまとめます。
日常 | 非日常 | |
屋内 | ペーパーナイフ他 カッターナイフ的用途 |
装飾品 道具 |
屋外 | ロープ切断、野営食の切り分け等 包丁的用途 |
武器 |
あくまで主な用途です。他に皆様色々と考えておられるとは思います。
ただ、非日常的用途についてはご説明を。
(特に道具。適当な呼称が思い浮かばなかった)
これは、例えばゲーム中に出てくる「宝剣」の様に、
宝石や細工をあしらった飾り物…という使い道があります。
短剣は小さいので装飾が容易く、また持ち歩いて自慢するにも適しています。
これが派生して、豪奢な物を作り、家宝として富や権力の象徴にする訳です。
ある種の身分証明書とも言えますね。
「フリントの短剣」は厳密に言えばこちらでしょうか。
こういった場合、刃物の切れ味というのは求められません。
それとは別に、刃物の部分を必要とする「道具」としての使い方もあります。
屋内で敵と刃を交える事もあるでしょうが、そういう戦闘面以外でも、
例えば建物に侵入(或いは脱出)する際に、障害物を切り払ったり、
壁に剣を突き立てて上り下りの助けにしたり。
(そういう職業の方にとっては、そちらが日常なんですが)
以前私が読んだ、ある小刀の宣伝文に、
一枚の分厚い鋼鉄を切り出して作った為、床板も楽に剥がせますという、
早い話が特殊工作部隊御用達みたいなお話がありました。
…一般人としては、そんな用途で選ぶ事なく、日々を過ごしたいものです(苦笑)。
実を言うと、考察第一回目はこれの予定でした
前振りで書き出した鞘の話が膨らみ過ぎ、そちらを先に出す羽目に…;
それにしてもいい加減、ロストール寄りの武器話から脱却しろよ私
(H14.12.16)
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