プレイ回想記3 〜穏やかな田舎町の場合〜



俺の名前はロキソニン。
…痛み止めって言うな。





元はテラネって町に住んでたんだけど、理由あって友達のナッジと旅に出た。

理由っつっても、もう一人の友達、ヴァンに怪我させやがった冒険者を叩きのめす――なんて、今考えたらガキっぽい話なんだけど、そん時はマジだったんだ。
けど、そのガルドランって勘違い野郎とも何か和解しちまって、折角ヴァンの怪我も治ったし、この際悪ガキ仲間で旅を続けようぜって事になった。


…で、今に至る。


いや、至るまでにも色々あったけどさ。ナッジの他にも、色んな種族の奴に会ったりとか――テラネじゃナッジ以外は皆人間で、だからあいつのこと気味悪がる奴多くてさ。でも外に出たら、皆普通に生活してんだ。世界って広ぇよな。
あと、いかにも怪しげな調査依頼とか、とんでもねぇ怪物の退治とか、挙句に闇の神器集めとか、ヤバめの仕事ばっか押し付けられたな。まーお陰で実力はついたけど。
それから――世話になった冒険者(ガルドランじゃねぇぞ)が次々に偉くなっちまった。皇帝とか将軍とか。実は貴族の御曹司だってのも居たな。…他に何かあったか? ああ、俺ら3人揃って、おんなじコを好きになっちまったんだ――そう言や、あの子もああ見えて立派に族長なんだよな。しかも実は地の巫女とか…って、色ボケてる場合じゃねぇっての。


…とにかく、今に至る。何でこんな苦虫噛み潰した顔で走馬灯状態かってーと…。





「くっ、この船ももう保たぬな…。ロキソニン、泳ぎは得意か?」





…将軍、勘弁して下さいよ。俺テラネ出身すよ。海なんか入ったことねえっすよ!
「何を言うておる! このままでは溺れ死ぬぞ!」
鎧着たまま飛び込んでも充分溺れますって! うわああぁっっ!!
(ドバッシャーン……)


…よ、よく生きてンな、俺…ゲホゲホ。
説明しよう!(誰にだ)俺は今アキュリュースにいる。つっても街を守る側じゃない。ディンガルのお偉方に左遷されて、攻略軍に組み込まれちまったんだ。
お陰で、以前一緒に戦った筈の向こうの傭兵には追い払われ、憧れのイークレムン様には会えず、挙句我らがアンギルダン将軍の忠告を無視したジラーク様サマに軍船に載せられて、ミズチに撃沈されたって訳。
マジで腹立つけど、肝心の将軍が従ってるからしょーがねぇ。けど絶対いつか寝首掻いてやっからなアイツら! ゲホッ、ゲホ…。

…ん? あそこに見えるはイークレムン様!
――あれっ、俺無視? 何か将軍と見つめ合っちゃってんですけど…。もしもーし、将軍?…もしかして惚れちゃいました?
「ば、馬鹿を申すな!」
あははは、真っ赤になっちゃって。愛に年の差なんて関係ないっすよ! 何々、昔の恋人に似てた? いやーもう…ってちょっと待った。その人も水の巫女?しかも人魚の鱗のイヤリングをあげた??
彼女も同じモン持ってるんすよ。それ見てると親っぽい人達が浮かぶって…赤い鎧の…。まさか…。

ま、まあ詮索は置いといてだ。何とか、この状況から将軍を助け出さねーと…。





「あ、ロキソニン! へへっ、ただいま!」


エステルーーッ! お帰り、もーすっげ会いたかったんだからな!…なんて言わねえけどさ。照れ臭ぇもん。あ、紹介するな、彼女が例の…
「…ろ、ロキソニン? ねえ、アンギルダンさんの救助作戦は?」
忘れた!(きっぱり)
「………」
んだよ、ナッジもヴァンも。お前らだってエステルの事気に入ってんだろ?


「…浮気野郎…」
「たった今、イークレムン様に無視されて落ち込んでた癖に…」
「大人しくしてんのも、ホントは美人のザギヴ将軍が忘れられねーからだろ?」
「ロストールの王女様に彼氏扱いされた時とか、1週間はその話だったよね」


…っ、お前らなあ! バラすなそーゆー事!(焦)

「…ロキソニン、ボク…ちょっと用事…。呼び出しにも……応えられないっ!」

うそっ、エステル! 今来たばっかじゃん! あああ行くなあぁっ!





慌てて彼女の故郷まで追って、平謝りしてパーティに復帰させた頃、白虎軍から呼び出しが掛かった。まぁた侵攻作戦だ。人使い荒いよな。
…あ? シャリじゃねえか? 何やってんだよお前!


…悪い、何か頭に血ィ上って、説明どころじゃないわ。とにかく怒涛の展開で、俺達はアキュリュースに上陸、今は神殿前にいる。――ああそうさ、シャリの奴、イークレムン様を攫いやがった。しかもアンギルダン将軍の目の前でだ! あんの誘拐犯!
後を追おうとする俺達の前に、だがジラークが立ち塞がる。今この場を離れるのは軍規違反だと言って。
(んな事言ってる場合かよ!)
俺は身構えた――俺の手で奴を叩きのめせば、将軍は罪に問われずに済む。けど、とっつぁんが口を開く方が先だった。ずっと耐えていたとっつぁんがだ。





「規則が如何程のものか! わしはわしの信じた道を行く!!」





(――とっつぁん…かっちょええ!!)
俺は武者震いした。――これぞ男だ、父親だ! 将軍、俺どこまでもついていくっす!
隣に立つ仲間も同じ気持ちらしい。ふと脳裏に、3人でガルドランをフクロにした思い出が甦る――あの時同様、俺達の心は一つになった。


  我らテラネ三人組改め<アンギル団>、結・成!!
  エステルも居るから何気に服がゴ○ンジャーなんて突っ込みは無ぁし!!


ジラークをのした俺達は、帝国を出奔した。エステルがまた故郷から呼び出し食っちまったから、男4人で例のイヤリングを手がかりに大陸を回る内――
ラドラスに捕まっているらしい事が、判明した。

「ラドラスって…ロキソニン、それエステルの故郷じゃない!」
蒼褪めるナッジとヴァン。俺も血の気が引いた。しかも彼女は今そこに居る!


駆けつけた俺達が目にしたのは、シャリに占拠された地下遺跡――いや、空中都市。4人の巫女を動力源にラドラスを浮上させたシャリは、俺達を始末に掛かった。
白状する。歯が立たなかった。見た事もねえ魔法を連発されて、俺達3人はロクな反撃も出来ずに倒れちまったんだ。
――けど、ここでも将軍は違った。あの派手な闇魔術を2発も耐えて、シャリにホーリーハートを打ち込んだんだ!
(すげえ…やっぱりすげえよ、とっつぁん!!)
賞賛の眼差しを一身に浴びて、将軍は多少照れ臭そうだったけど…ああでもそれ所じゃないすね、早くあの子達を助けに行かねーと!


「…ロキソニン! ロキソニン、ロキソニン!!」


怖かったよ、と泣き崩れる彼女の肩をそっと支える。もう大丈夫――もう何処にも行かせない。ずっと一緒だから、と囁く声は、君の耳に届いただろうか。
…って、ちょ、何皆して突っ立ってんですか! 特に将軍!娘に一声でも――俺達の様子に呆れてたって…遊びに来て下さいねってイークレムン様……おい! 親子!あんた達、親子の会話は!?
しかも折角助けたのにエステルまたどっか行っちゃうし! ああああ!!(泣)





…ま、まあとにかく皆助かった訳だし、落ち着いた処でカルラが動くって噂が立った。以前話してくれたデカイ事――ロストール攻略だ。
「協力して欲しい」とは頼まれてたけど…ごめんなカルラ。俺、将軍と一緒に帝国から亡命するって、もう決めちまったんだよ。

「ロストールには、アトレイア様も居るしね」
「ティアナ様に軽蔑されてるってのも気になんだろ?」

…だから、お前らそゆ事言うなっつの!

でも、気になるのは確かだ。こないだ、アトレイア様を酒場に連れ出した事で、ティアナ王女は凄まじく機嫌を損ねたらしい。俺としちゃ、アトレイア様が明るくなってくれたのは嬉しいんだけどな…そう思いつつ、王宮の裏口から二人を訪問する。
まずはティアナ様だ――軽蔑って以上は、何を言われるか想像付いてる。気が重いから先に済まそう。


「ロキソニン様…、私に出来るのは、ただ祈る事だけです…」


………、あれ? 反応、普通じゃねえ?

首を傾げる俺の脳裏に、前世の記憶野生の勘が閃く。まさか――まさかと思って飛び込んだ隣の部屋では。





「…もう…遅いのです。何もかも…。でも、仕方ありませんよね……」





アトレイア様ぁぁぁ!!!(号泣)

嘘でしょう、俺(大いなる宇宙意思で)あなたを闇堕ちから救うつもりだったんすよ!?何でなんすか、「文字覚える」って、「頑張る」って言ってくれたじゃないすか!
「典っ型的な浮気男の末路だな…」
放っとけ。くそー、もういいよ。こんな冷たい国にゃ用はねえ。今からロセン行くぞヴァン。…ああ、その前にギルド寄るか。何か仕事あるかもしれねーしな…。





その後の展開は、まあ…お約束だ。ネメアが次元の狭間に落ち、ディンガルとロストールが激突して……一旦戦線が膠着したのをいい事に、俺達は再び旅に出た。

テラネを発った時に比べると、本当に賑やかになった――あの頃、俺とナッジはほとんど迷子みてぇだった。今は違う。頼りになる仲間達がいる。そして遥かに強くなったナッジとヴァンと――エステルがいる。ネメアを助ける事だって、きっと不可能じゃないと、そう思える。
あ、そーいや今、3人で俺が一番エステルといい感じだ。羨ましいか? へへっ。










…ただ、一つだけ、理不尽な事がある。





親友のヴァンとナッジを押しのけて喋るエステルよりも。
そのエステルをも黙らせる貫禄とっつぁん・アンギルダンよりも。





…何で、たった今仲間になったゼネテスとの仲がアツイんだ?





「ロキソニン…どおりで、旅立ってすぐ両手剣と胴鎧を買ったと思ったら…」

どおりで…って何だよナッジ! そりゃ「あんな風に強くなれるかも」とは思ったけど、目標にしただけだ! 気持ち悪ぃコト想像すんな!

「ひどい…ボクだって君の事すごく好きなのに…やっぱり逞しい人がいいの?」

えっ、エステル、ホント?…って後半なに! 違う!全然違う!! 俺は君を…。

「女好きは世を忍ぶ仮の姿だったか…。まぁ安心しろロキソニン、エステルは俺らが幸せにするから」

するなっ!奪んな!つか納得すんな、ヴァンのボケぇぇ!!

「わしはお主をイークレムンの婿にと思っておったんじゃが…ま、恋愛は個人の自由じゃしな。ゼネテスも息子のようなモンじゃし、婿なのは変わらんか」

変わりますって大違いですって! 何勝手に頷いてんですかぁ!

「ん、まぁそういうワケだ。皆して祝福ありがとよ」

そしてあんたもノッてんじゃねぇ! いいか、俺は男とくっつく趣味なんかねーからな!

「…今のはちょっと傷付いたな」

え、あ、すんません。

「言ったな? んじゃ傷付けた責任取ってもらおうか」

って、どこ連れてってんだよオイ!そっちは寝室だ! コラ、猫2匹!止めろ! お前等も首振って諦めんな!それでも仲間か?親友か!? てか離せ!!





俺はホ○じゃねェェーーーーーっ!!!







初・男主人公の報われない生涯。お姫様攻撃が一番痛かった…アトレイア様ぁ(泣)
あまりにも倫理的に間違ってる気がして、ここで消しちゃいました。クリアは何時になるやら。


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